巌頭之感

                     藤村操

                         (   )は、ふりがなです。

悠々たる哉天壌、

遼々たる哉古今、

五尺の小躯(しょうく)を以て此大をはからむとす、

ホレーショの哲学竟(つい)に何等のオーソリティーに値するものぞ、

万有の真相は唯(た)た一言にして悉くす、(つくす)

曰く「不可解」、

我この恨みを懐いて煩悶終(つい)に死を決するに至る。

既に巌頭に立つに及んで胸中何等の不安あるなし、

始めて知る、大なる悲観は大なる楽観に一致するを