還暦の初体験!前身麻酔

 

 平成最後の1月頃のことですが、なんとなく右下腹部に違和感を感じるようになり、試しに鏡の前に立って見ると、明らかにぷっくら膨らみが。
 痛みはまったくありませんが、これが時々引っ込んだり、押してみると戻ったりします。
 色々とネット等で調べてみると、どうも鼠径ヘルニアらしいことがわかりました。

 こりゃ仕方ないなぁと、3月の終わり、まず、かかりつけ医の所へ見てもらいに行きました。あ〜鼠径ヘルニアだねぇ、何かお腹に力を入れることをした?と問われました。

 実は、現役時代から中性脂肪やコレステロール値が高いと言われていたため、退職を機に運動しようと一大決心。本当は毎日歩くと良いのでしょうが、なかなか時間が取れないので、一週間に二度、一万歩以上を歩くことを目標にし、歩かない日は、腹筋50回、スクワット50回を実行することにしました。情けない話ですが、最初は腹筋が50回できないんですよ。それが毎日やっていると一ヶ月も経たないうちに普通に出来るようになりますよね。そうなると無茶をし出すんですな。色々とヒネリを入れたりしてました。

 と言う話を医師にしたら、う〜ん、勿論、加齢ということもあるけど、急にやりだしたそれが原因かな?とのこと。それで、痛みがないなら様子見かなぁと言われました。でも、どうせ手術しないと治らない症状だし、今は大きな病院は紹介状がないと予約も出来ないし、聞けば紹介状に有効期限はないとのことだったので、とりあえず紹介状の作成をお願いしました。紹介先は、今まで3度ほど検査入院等でお世話になった、家から路線バスで行ける駅前のデカイ病院です。

 鼠径ヘルニアの手術は、腹腔鏡手術で行い、日帰り手術もあるけど、普通3日位の入院となりそうだということはネット検索でわかっていました。お袋さんの通院や様々な行事のこともあり、9月の始め頃に手術するのが良いかなと、8月の中頃、その病院の外来を受診しました。

 間違いなく?鼠径ヘルニアと診断され、その日のうちに事前チェックとして、血液検査、心電図、エコー、レントゲン、CT検査、尿検査を行い、肺活量まで調べて、9月の始めに入院することに決まりました。手術の説明としては、おへそに穴をあけ、そこから二酸化炭素を注入してお腹を膨らませ、他の2カ所の穴から器具を入れて施術するということでした。ふ〜ん。
 そして逆に、私から医師に次のことを聞きました。

 普通手術には立ち会いが必要ですよね。私には嫁さんはいないし、89歳のお袋を立ち会わせても、そっちの方が心配だし、妹は嫁いで大阪の枚方にいるし、近くの親戚もジジババばっかりだし、手術の立ち会いは、いなくても良いですか?

 これについては、今は一人暮らしの老人も多いからなどでしょう。いいですよとのこと。
 それから、看護師さんからの書類作成のレクチャー、場所と相手を変えてのオリエンテーション?を受けました。この日は、どうせ事前検査をするだろうと朝飯抜きで朝一で行き、昼飯も食わずに午後まで、かなり時間が掛かりました。
 そうそう、手術の1週間前から禁煙しなさいとのことでした。学生時代、定期演奏会の前に一ヶ月間禁煙してましたけど、それ以来のこと。久々だなぁ、大丈夫かなぁ?と思いましたが、意外に、ど〜ってことはありませんでしたよ。

 そして、9月の始め、一人でトコトコ病院へいきました。駅前のバス停から病院までは、近いようで結構距離があります。今回はどうせ暇だろうと思い、電子ブックは勿論、パソコンとテレビから録画した映画のブルーレイディスク1枚、延長コード等もカバンに詰め、えっちらおっちら歩いていきました。
 私自身はそれなりに緊張していたのに、枚方に住む妹も、そしてその子供たち、甥っ子も姪っ子も、お婆ちゃんは一人で大丈夫か?と、私よりそっちを心配してました。なんちゅーこっちゃ。

 入院当日は、朝から食事は勿論、水も飲むなということで、午前中病室に入ってから、すぐ点滴が始まりました。手術は午後2時頃かなとのこと。退屈だぁ、と本を読んで待ってました。で、手術前に、おヘソだけ、病室で掃除するとのこと。看護師さんに、綺麗なおへそですねぇ。いつも掃除しているんですか?なんて言われましたが、んな、まさかねぇ。しかし、ヘソを褒められてもなぁ。

 本を読みながら待ってましたけど、なかなか呼ばれない。朝から何も口にしてませんけど、点滴のおかげなのか、喉も渇かないし、腹も減りませんでした。けれど、なんせ午後の時間。眠たくなってウツラウツラしてました。
 そして、やっと手術室から呼ばれたのが午後2時半頃だったかな。術後3時間は、トイレに行けませんとのことだったので、取りあえずトイレに行って、病棟の看護師さんに連れられてトコトコ手術室のある階へ。

 そして手術室で、執刀医(切らないけどね)や手術室の看護師さん達に挨拶して、馬鹿な世間話をしている内に、ふか〜い眠りの中へ。。。。姪っ子が全身麻酔をした時は、なんとか抵抗しようと頑張ったなんて話を聞いてましたけど、なんせ私は昼寝していたところでしたので、すぐ寝てしまいました。

 で、気がついたら、病室のベットでありました。枕元の時計をみると午後5時15分頃。体には色々センサーがくっついていました。傍らの看護師さんが、このまま3時間は何もせずに、じっとしていてくださいね。トイレに行きたくなったら呼んで下さい。尿瓶をあてます。傷口は痛みますか?と気づかってくれますが、まったく傷口?に痛みはなく、あるのは、お腹の違和感だけ。ちょっと触ってみると、おへその周りの毛は剃ったみたいで、傷口は、1センチほどの直線がヘソの両側にあり、既にカサカサのカサブタになってました。

 そしてこの3時間が辛いこと辛いこと。センサーが一杯くっついているので、仰向きのママ寝返りも打てない。自慢じゃないけど、自宅では、座敷に蒲団をひいて部屋中転がりながら寝ているほど、寝相の悪さは天下一。ビジネスホテルのベットから落ちそうになった事もあるくらい。しかも、ベットが少々私には、やわらかいので、腰が痛くなってきます。それに加え退屈で退屈で仕方ありません。手を伸ばしたら上手い具合に電子ブックに手が届いたので、ずっと本を読んでいました。

 午後8時20分頃、やっと体についていたセンサー等がとれ自由の身になりました。幸いにも、じっとしている間はトイレに行きたいとは思いませんでした。看護師さんから、明日は朝から普通食ですよと、言われました。

 そして長〜い夜が始まりました。まぁ、消灯時間はありますけど、枕元の灯りでずっと本を読んでました。普段から宵っ張りですし、既に睡眠は充分とってしまいましたからねぇ。夜の間に、何回か看護師さんは覗きに来てました。

 次の日の朝、美味しく朝ご飯を頂きました。ここのメシはとても美味しいのです。まぁ、ふーふーしながら食べるほど熱くないのが残念ですが、贅沢いっちゃぁいけませんね。
 点滴もいつしかとれ、傷口が痛かったら飲んで下さいと頓服を持ってきてくれましたけど、傷口は全く痛くありません。触ってみると、ちょっと怪我したくらいの感じでした。

 執刀医(切らなかったけどね)が覗きに来て、どんな感じですか?ちょっと傷口みせてください。というので見せると、あーまったく問題ないですねとのこと。先生が上手だったんじゃないですか?と言うと、いやいや傷がすぐ治る体なのでしょうと言われます。んなわけないよね。今日1日様子を見て、問題なかったら明日退院です。と言われ、退院してからの外来受診の予約をしました。

 この日の1日は、なにもすることがありません。点滴もぶらさがってないので、病院中を探索したり、本や映画をみたりして過ごしました。結局、入院中に、本を3冊、映画を一本見ることが出来ました。
 入院中の楽しみは食事しかありませんね。ただねぇ、とても美味しいんだけど、分量が少ないんだよね。と言うことは、やはり普段の食事は多すぎるということなのかなぁ。そうそう、入院中は、お小水は普通に出てましたけど、一度も大きい方は出ませんでした。まぁ、1日絶食してるからね。

 入院3日目は、朝食を食べ、会計処理をして、9時40分頃退院。薬が出るわけでもないので、ヒョコヒョコバス停まで歩いて、バスで帰ってきました。
 家に帰ると枚方から妹が来訪しておりました。ばあちゃんは一人でろくなものを食べてないだろうと、いろいろな差し入れを持ってきてました。

 退院して2週間ほど経過してから外来に行きました。ホントは一週間後くらいが目処なのですが、いろいろ予定があって、こうなった次第です。で、どうですか?と聞くので、入院中は、お腹の違和感がすごくありましたけど、退院してからは便も出て、まったく普通の状態です。と答えました。で、傷口?をみて、んじゃ、これでいいですね。ということで、晴れて全快?です。もう腹筋やっていいですか?と私から聞いたら、う〜ん、あと一週間はやめときましょか、とアドバイスしてくれました。

 これで私の初体験は終わりなのですが、10月下旬頃、以前にオリエンテーション?をした看護師さんから、その後どうですか?と電話がありました。アフターサービスってやつですかね。

 それにしても、大病院というところは、何か病を得て、フラフラ状態で行っては絶対ダメですね。救急車による緊急搬送なら別でしょうが、あれだけ事前チェックで様々な検査室に行かされ、また沢山の手続き書類を作成する必要があるのですから、ある程度しっかりした状態で行かないとなぁ、と思いました。鼠径ヘルニアは別にしても、日頃の健康診断はそれなりに重要で、結果が異常だったら、迷わず病院に行くべきでしょう。元気な状態で病院に行かないと、事前検査だけでまいってしまいますよ。
 以上、還暦の初体験ルポでした。

(ねむり姫 60歳)