歴史と災害(第2回東海学シンポジウムに参加して)

平成27年1月〜7月ネット上にて公表 

 2014年11月9日第2回東海学シンポジウムが開催されました。主催はNPO法人東海学センター。そして、今回のテーマは「歴史と災害〜災害は歴史を変えたか〜」であります。5人の講師の講演とパネルディスカッションが行われました。それぞれの講師の講演タイトルについては、私の当日のブログに掲載いたしましたので興味がある方はそちらをご覧下さい。

 このシンポジウムは、平成5年、春日井市政50周年を記念に「春日井シンポ」として始まり、平成24年まで20回にわたって開催されたモノが前身となっています。第8回シンポにおいて、故森浩一先生から「東海学」が提唱され、また、一過性イベントで終わってしまうシンポジウムが多い中、1000人規模のシンポが長期に開催されてきたことや、そのテーマ設定のユニークさから県内のみならず、全国の古代史ファンには知る人ぞ知る、結構有名なシンポジウムでした。でも、色々予算の関係で市議会で取り上げられることが多く、開催20回で幕を閉じ、昨年から新たに「東海学シンポジウム」として、NPOが運営を引き継いだというモノであります。この日も県内各地は勿論、愛媛から足を運んできたという人に出会いました。

 さて、今回のテーマは前述したように「歴史と災害〜災害は歴史を変えたか〜」。少々これまでとは毛色の違ったものになりました。3.11の記憶はまだ生々しいですし、おりしも、2014年は、広島の土砂災害、そして御嶽山の噴火、と、否が応でも自然の脅威を感じざるを得ない年で、まさにタイムリーな講演会となりました。その後、長野での地震災害もありましたね。
 「東海学」と銘打っていますから、フィールドとしては、愛知、岐阜、三重が中心になります。伊勢湾・熊野灘に津波が押し寄せた明応地震(1498)、宝永地震(1707)、嘉永(安政)地震(1854)の災害がどのように記録され、またその救済措置はどのようなものだったのか、あるいは、後世への注意喚起や警鐘はどのように行われてきたのか等々。なかなか興味深い内容でありました。私自身は、地震考古学 災害歴史学というジャンルが、確立された分野としてあることを、今回初めて知りました。

 そして、驚嘆すべき事実が明かされました。それは、文献資料や活断層の調査、遺跡の地震痕跡等から、貞観11年(869)に、まさに東日本大震災と同じ災害が発生していたこと。しかも、これらの事項を統合的総合的に発表する寸前であったということが発表されました。つまり、学者の間では想定内のことだったわけです。なんでも3月7日の研究会で発表する予定であったモノが時間切れで次回に回されたとのことです。もし、これが予定通り発表されていたら、ひょっとすると被害の軽減に役立ったかもしれません。
 これを機に最近は、地震予知や噴火予知の研究会に、所謂理科系学者ばかりでなく、人文学者も呼ばれるようになってきたとか。ここへ来てクロスオーバー的な学問の必要性にようやく気がついたと言うことでしょう。その意味では、災害は歴史を変えているのかもしれません。でも、たとえば原発はどうなんでしょうか?

 原発の存在する地域では、働き口、生活するために必要なのだという意見もあります。わからなくもありません。しかし、たとえば鰆木周見夫はその著作の中で、3.11の災害の後、原発事故から遠く離れていて直接的な被害を受けなかった人々の心情を3つのパターンに分類しています。
   1、自身の想像力を働かせて、その危険を認識し、原発全廃への意思を明確にする。
   2、危険であることはわかったけど、自身の生活へのマイナス面を考慮して稼働を黙認する。
   3、相変わらず原発を推進する。
 あなたは、どれに該当するでしょうか?
 もし私が担当者であったならば、フクシマの後始末もできておらず、避難態勢も確立されていない今の状況では、とても怖くてゴーサインを出す勇気はありません。また、財政赤字を子孫に残すことを憂慮する一方で、未だ処理方法も確立していない放射性廃棄物を子孫に残すことは厭わないという心情には、今一つ理解できないモノがあります。借金なんて、またみんなで頑張れば返せるでしょ?

 ところで一方、せっかく災害の情報が発信されても、受けとる方の問題もありますよね。実は2014年8月6日に土砂災害警戒情報が春日井市に出され、高蔵寺ニュータウンの一部にも避難勧告が発令されました。幸い我が家の地区は対象外ではありましたが、後で聞いた話によると、避難をした人は誰もいなかったとのこと。難しいですね。もっとも、私はエリアメールでこの情報を聞きましたけど、実際その地区の住民に対し、その情報はどのように伝達されたのでしょうか?

 そして、貞観地震のあった9世紀は、このあと東南海にも大地震が発生しています。天災は忘れた頃にやってくると言いますけど、被害を最小限にくい止めるためには、日頃の心がけが大切だと思います。先人達の教えを無にしてはなりませんね。

(ねむり姫 56歳)