雑誌「林道」平成7年(1995年)1月号掲載

−年男、年女特集 新春に思う−

 今、思うこと
  「清流をめざして」
 これは、我が恩師片岡順先生から卒業記念としてサインと共に贈られた言葉である。以来13年間、私の仕事上での座右の銘であり、支えとなってきた。
  清流の源となるのは、言うまでもなく森林である。しかし、人間の手の介在せぬ自然のみが美しいとは思わない。生まれ育った土地でもないのに、 田舎の景色がなつかしく感じられるのは、人間が自然との共同作業で作り上げたものだからなのである。(映画「おもいでぽろぽろ」より)。荒俣宏は人と自然との関係を卵の殻で説く。曰く、殻が厚ければ厚いほど雛は安全ではあるが、厚すぎれば生まれ出ることができない。あの殻の厚みは、微妙なバランスを保っているのである。
人と自然との関係もかくあるべきというわけだが、これは日本国内の問題に留まらない。経済優先による安い労働力と緩い規制のみを求めた安易な海外進出は間違ってはいないか。世界最高水準を誇る我が国の公害防止技術は、海外において最大限にいかされているのか。また一方、先進国と呼ばれる国々が、これ以上物質文明拡大の方向で発展していくことは、犯罪行為ではないのか。そろそろ勇気ある決断が必要な時期なのかもしれない。
 組織の中にいると、日々の仕事に追われ、ともすればその本来の目的を忘れてしまう。自分の今行っている事がどのような意味を持つのか。どのような影響を与えるのか。様々な角度から考察できる幅広い視野を持ちたいものである。
 坂本龍馬がこの世を去ったのは、33歳。宮沢賢治、37歳。また、シェイクスピアがハムレットを書いたのが36歳の時と聞く。私は今年36歳になってしまう。もう遅い?いやいや、伊能忠敬が測量を学んだのは50歳になってからという。まだまだ、これからである。
(ねむり姫36歳 年男の年に投稿)