桃太郎と静御前と紙パンツ

平成6年12月26日 職場における「朝のあいさつ」の原稿

 おはようございます。
 本年最後のおはよういっせい運動の日となりました。今年もいろんなことがありましたが、その中で、政治面としては、首相がコロコロ変わったり、某政党と某政党がくっついて、某法案を通して政治改革が完成したとされる現象がありました。あの程度で改革と言っているのは、笑ってしまう話です。

 そこで、今日は新しいシステムを開発する、あるいは改革するということについて、私が電算担当の時に受けた研修の内容をわが家のデータベースから拾ってきましたので、紹介したいと思います。

 その時の講演のタイトルは「桃太郎と静御前と紙パンツ」というものでした。このままだとなんのことやらわかりませんが、まず、桃太郎からお話しますと、これは、「昔々あるところに……」という例の昔話のことです。問題は、この川へ行ったおばあさんの洗濯方法にあります。
 川の水を使い、手で揉み洗いして、天火で乾かす。これが、いわゆる昔の洗濯の方法だったわけです。

 次に静御前。これは、小野の小町か、楊貴妃か、静御前に袈裟御前という美人の代名詞の静御前ではなくて、日立の全自動洗濯機の名前です。つまり現在の洗濯方法を表しています。現在の洗濯方法は、水道の水を使い、電気エネルギーでモーターを回し、赤外線を使って乾燥するというものです。たしかに便利にはなりましたが、これは改革、英語で言うとDevelopmentとは言わない。単なる改良、Traceにすぎないというわけです。
 これに対し、洗濯の目的、つまり清潔さや心地よさを達成するために、革命的発想をしたのが、紙パンツというわけです。

 では、コンピュータを使った革命的システムは、何かというと、その代表的なのが、銀行のATM、現金自動支払いシステムであります。印鑑絶対主義の日本の社会において、印鑑なしでお金がおろせるようになってしまいました。これのおかげで、クレジットカードで買物をすることも抵抗がなくなり、カード破産なんてこともあるわけですが、1つのシステムが文化さえ変えてしまう力があるという例ですね。

 ただ、洗濯機メーカーからは紙パンツなんて発想は出ませんし、印鑑職人がカードシステムを開発することは出来ません。つまり、それだけ、内部の当事者が従来のシステムを改革することは難しいわけです。

 政治改革が終れば、次は行政改革ということになります。一納税者の立場から言えば、現在の行政システムが合理的であるとはとても思えません。とはいえ、今度は政治家が行政側の改革に口を出すという形をとりますから、お手並拝見と言いたいところですが、我々にとってはキツイ時代がくるのかもしれません。
 いずれにしても、来年も色々なことがあるでしょう。でも、如何なる事が起こっても、しなやかに、そして、したたかに対処していきたいなぁと思っております。

 以上、本年最後のおはよう一斉運動を終ります。一年間ご苦労さまでした。

(ねむり姫 35歳)

追記:文中の研修とは、当時、埼玉県政策審議室副審議監だった田中寿一氏の講義のことである。